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おはなし

徹底的に患者の話を聞く(症例=不安神経症) パート4

2016年2月10日 投稿者:小松医院

こうしてじっくり時間をかけて話すうちに、幼い頃Yさんを育ててくれたおばあちゃんの話になりました。Yさんは「おばあちゃんにはよくしてもらった」と感謝しているのに、一方で「おばあちゃんは厳しかった」という話になるとなぜか目に涙を浮かべているのです。
 それから家族の話になり、とりわけお母さんの話になると、涙がポロポロこぼれて止まらず、自分の感情をコントロールすることができなくなってしまうのです。
 それからしばらくの間、Yさんには子ども時代のことを思いつくままに話してもらったのですが、お母さんやおばあさんのことに触れると決まって涙を流す、という不思議なことの繰り返しでした。

                                                                 山形県 山形市 長町 心療内科 小松医院

徹底的に患者の話を聞く(症例=不安神経症) パート3

2016年1月27日 投稿者:小松医院

Yさんは初めの頃、自分で不安の原因を見つけようと心理学関係の本を何十冊も読みあさりましたが、結局何も変わりませんでした。そこで、いろんな心療内科を片っ端から受診してみましたが、それでも変わりはありませんでした。中には、「自分の道は自分で切り開きなさい」と立派なことをYさんにアドバイスしてくれる先生もいらっしゃったようですが、それを聞いてますます萎縮してしまったそうです。しかし、途方に暮れて専門医を尋ねてきているわけですから、そういったことを言われ萎縮してしまうのも、無理もないと思います。
 Yさんは「ぼくは一生、ビクビク不安なまま生きていかなければならないのでしょうか」と、搾り出すようにして口を開きました。
 こういう時、私は斜め45度の角度で、患者さんと目と目を合わせないようにして座ります。こうすることで患者さんにはプレッシャーがかからず、楽な気持ちで自分のことを話せるようになるからです。

                                                                                            山形県 山形市 長町 心療内科 小松医院

  • 徹底的に患者の話を聞く(症例=不安神経症) パート2

    2016年1月13日 投稿者:小松医院

    不安神経症について、症例をあげて原因などを説明してみたいと思います。思春期に多い心の病なので、学校の先生方にもぜひ知ってもらいたいと思います。
     今回お話するケースは、幼い時の家庭環境、その中でもとくに母親と子どもの関わりが問題になった例です。お母さんの子どもに対する偏った接し方によって、感情が押さえつけられたまま成長してしまった患者さんがいました。それがカウンセリングによって、押さえつけられた感情を自分自身ではっきり自覚してもらうことで快方に向かった、という点にご注目ください。
     ある日、25歳くらいの男性Yさんが、動悸、理由のない不安発作を訴え、当院にいらっしゃいました。小さい時、お父さんとお母さんは共働きで、Yさんは同居しているおじいちゃんとおばあちゃんに任されて育ったそうです。Yさんは3人きょうだいの真ん中で、ちょうど3歳上にお兄さん、3歳下に妹さんがいます。Yさんは、仕事に対してまったく自信がなく、いつも不安で落ち込んでいて、仕事中は緊張でビクビクしている、と言います。

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    徹底的に患者の話を聞く(症例=不安神経症) パート1

    2015年12月19日 投稿者:小松医院

    不安神経症は、中学生高校生時代に発症する場合と、社会人になり働くようになってから発症する場合が多いようです。はじめは、一人で静かに寝ようとしたとき、ぼんやり歩いているとき、一人で何もしないでいるとき、理由のない不安が突然わき上がってきます。漠然とした不安がふっと出てくるときもあれば、これではもうダメだ、死んでしまうのでは…と心臓がドキドキするほど苦しいときもあり、その差はさまざまです。しかし、20分ほどで自然と沈静化するのが一般的です。

    それが1ヶ月に何度もくり返す人と、月に1~2回の人もいます。そのような発作をくり返すうちに、人込みや電車やデパート、美容室、とくに歯科医院に行くのがとても恐ろしくなるのが特徴です。また特徴のひとつとして、不安発作が起きて心臓がドキドキしているときでも、他人と一緒にいるときは、なんとか周りの人に知られないように我慢する人が多いようです。パニック発作の場合、周りの人が気づきますので、そこが不安神経症との違いのひとつです。また重要な場面、たとえば試験中などは発作は起きません。不安神経症は、心の病のひとつで、昔はぜいたく病とよばれていたこともあります。それは、比較的経済的に恵まれた家庭に多く発症したからです。また経験者でないと、この苦しみはわかりません。無理して学校へ行きますので、先生方も周りの生徒も気づかないのですが、学校での生成が急激に下がった、そわそわして落ち着かない、ボーっとしてる様子など見られたときは、注意深く、その生徒を見ていただきたいと思います。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート6

    2015年10月16日 投稿者:小松医院

    Tさんの心のキズは、幼少期の出来事を思い出し、未熟ながら大人になった現在の自分の立場からその当時の両親の事情、世間の事情を理解し、それを受け入れることにより、完全ではありませんが、“くり返し”と“ふたつの世界”の強迫が日常生活の中で弱くなってきています。

    小さいときから親(たいていは母親)の何らかの原因また都合、好みなどで、「あなたはダメな子どもだ」と決めつけられた子どもは、本人はそうとは気づいていないのですが、自分自身を親の考え方通りにダメな人間と決めつけ、一生才能を伸ばせないで終わる場合があります。

    また、そのように親にバカと決めつけられた子どもは家庭内でもバカを演じてきょうだい、親子間の平衡を保つ人もいます。

    また、小学校の先生に低学年のときに「変わっている」とレッテルをはられ、親もそれをうのみにしたりすると一生才能を伸ばすことができません。しかし母親が自分の子どもの才能を信じて支え、それなりに子どもの扱いをうまく育てた場合、かなりの才能を発揮します。その良い例としてエジソンがあげられます。日本では女性司会者として長年活躍しておられるK.Tさんが良い例だと思います。こういった方々の親は、子どもが、たとえ学校の先生からレッテルをはられても、その子の才能を敏感に感じ取り、子どもの力を信じることができたのだと思います。子どもの才能を伸ばすためにも、レッテルをはらないことは大切です。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート5

    2015年10月15日 投稿者:小松医院

    両親はTさんの、同級生に劣っている姿を見るのを嫌がり、たとえば運動会や学芸会に来てくれたことはほとんどありません。「Tの鈍い姿を見ると疲れる」と両親が話していた記憶が、Tさんにはあります。

    そのくせ、世間体を人一倍気にする母親は、同級生や近所の子の親への見栄から、習いごとや塾には嫌がるTさんを無理に行かせようとしていました。「子どもの教育のため」と母親は周囲には言っていましたが、Tさんには必ず「近所の○○君も行ってるんだから」とせき立てていたそうです。

    両親は心からTさんを愛そうとしたことがなく、お母さんに至っては日頃Tさんを無視しようとするくせに習いごとなど、Tさんがまったく望んでいないことについては、非常に強引に干渉してきます。しかも弟さんとの間に露骨な差別をするなど、幼いTさんの心を翻弄しました。この両親も幼いときにそれぞれ育ち方に問題があり、ここにも負の連鎖が認められます。Tさんが大人になってからの話ですが、近所の人から「あなたのおばあさんはあなたが生まれたとき、あなたを殺そうとしていた」という話を聞きました。おばあさんもまた、心に問題を抱えていたのかもしれません。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート4

    2015年9月29日 投稿者:小松医院

    一方お母さんは、大勢の兄弟姉妹の末っ子として生まれ、両親の過保護・過干渉のもとで育った人で、世間体を気にする性格です。

    Tさんはたまたま未熟児として生まれました。そのため、小学校入学までは体も小さく、知能の方も同じ年の子と比べれば、どうしても遅れがちに育ちました。そのためもあってか、お母さんはTさんを疎んじ、2歳下の弟に自分に近いものを感じていたのか、こちらを溺愛したのです。

    Tさんは小学校の入学の時点ではまだ体も知能も同級生に追いついておらず、学校はそうした児童だけを集めたクラスへの入学を勧めたそうです。お母さんはこれに必死に抵抗しました。それはTさんの将来を憂慮したからではなく、息子の遅れを認めたくなかった、つまりは単に自分が「知恵遅れの子の母親」と言われるのが嫌だったためだ、とTさんは今でも確信しています。

    また、小学校、中学校を通して、学区内に公務員や経営者、医師や弁護士など一般に社会的地位が高いとされている職種の保護者が多く、教師からは工員の息子であるTさんに対してバカにする態度を取られていました。そうしたこともあってか、Tさんは今でも、社会的に地位が高いとされる人たちを前にすると、殺してしまいたいと思うほど憎しみの感情が出てくるといいます。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート3

    2015年9月24日 投稿者:小松医院

    長期にわたるカウンセリングによりTさんはこの症状の原因に気づき、それを見据えることで症状は軽くなりました。その原因とはなんだったのでしょう。

    この場合の原因も、Tさんとご両親の幼少期の関係にありました。

    世間体を気にする両親の愛情不足、兄弟との差別体験が、Tさんの心に大きく深いキズを残していたのです。どのようにできたキズであったか、詳しく見ていきましょう。

    強迫神経症に悩むTさん。そのTさんのお父さんは、幼いときに父親を亡くし、経済的に恵まれない家庭で、常に差別感を持って育った人です。

    そのためか、Tさんに対して心から笑顔を見せたことがなく、常に不安にさいなまれたような顔をしています。そして今日に至るまで、Tさんの顔を見るたびに「世の中は甘くない」「おまえはダメなやつだ」と常に悲観的な言葉を投げかけ続けてきました。

    いつまた貧しい生活に逆戻りしてしまうかもしれないと思うと、子どもの養育費にお金がかかることを非常に嫌がり、Tさんがケガで入院したときなど、経済的負担に憤り、荒れ狂っていたそうです。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート2

    2015年9月15日 投稿者:小松医院

    Tさんは高校生のとき、視聴覚室で、あるアメリカの映画を見ました。

    生死の境をさまよう主人公は、ある夢を見ます。オートバイで走っている夢です。夢の中の主人公は、踏切に差し掛かります。すると頭の中で、「引き返せ!踏切の向こうは死者の世界だ!」という声が聞こえます。そこで思いとどまり、目が覚めた主人公は九死に一生を得る、というストーリーです。

    踏切の向こうとこちらを生と死のそれぞれの世界に見立てたストーリー自体は、特別目新しいものではないでしょう。しかし、この映画を見た日を境にTさんの生活は一変してしまいます。

    Tさんは何かをしているとき突然、「そこから先は死の世界だ!引き返せ!」という声に悩まされるようになったのです。

    たとえば自宅のドアに鍵をかけ外出しようとすると、「危ない!引き返せ!」という心の声(強迫観念)が聞こえて、慌てて火の元と戸締りを再点検する、そんな動作を20回もくり返してしまいます。

    また、車を運転しているとき、ある交差点に差し掛かると、「引き返せ!」という心の声が聞こえ強迫観念に悩まされ、同じ所をぐるぐる回り、どうしてもその交差点から先に進むことができません。意を決して直進し、はっとわれに返ると、なんと3時間も付近を周回していたことがあったそうです。

    ヒゲなどを剃ろうとしようものなら、不安のあまり何度もカミソリを当て直し、顔が血まみれになってしまいます。

    当時Tさんは、社会に出て忙しくなれば自然におさまるだろうと考えており、またもし精神科などに通院すれば周囲から知的障害者と決めつけられるような気がし、とくに対策も立てずに就職しました。

    しかし、勤め先でも同じ動作を何回もくり返してしまうため仕事がはかどらず、能力に欠けると思われることが常で、たびたび転職をくり返していました。転職をくり返し、33歳になったとき、「もう世間に気づかれてもかまわない」と思い、私の診療室を訪ねてくれたそうです。

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    個性を尊重すること(症例=強迫神経症) パート1

    2015年9月8日 投稿者:小松医院

    一見知的障害と見られる人々の中に、知的障害ではなく家庭環境やさまざまな原因によって知的障害に見え、小学校時代、特別学級に入れられ、生徒自身も知的障害と思い込んでしまうことがあります。そして一生そういった施設で過ごしてしまう人々を学校の校医をしていた頃何人か見てきました。

    Tさんも同様、知的障害と見られていましたが、幸いその中から立ち直り今は社会で立派に働いています。もし、一見変わったように見える生徒や学力が少し低い生徒がいても、安易な病名をつけないでほしいと思います。また、学校の先生には生徒にレッテルをはらないでほしいとおもいます。

    異常に見える行動をする生徒の中には、その異常を演じることによって、家庭やクラスの均衡を保ったりしている場合もあります。本人は、そのときは演じているつもりはまったくないのですが、当院にかかられた患者さんの中で、カウンセリングを進める中で自分が演じていたことに気づかれる方が多くいらっしゃいます。

    次回から載せる事例は、自分自身の心を翻弄され、強迫神経症の症状を呈したTさんの事例です。

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